クラウンメロン
クラウンメロン
事例紹介 - ケーススタディ
事業内容: クラウンメロン生産・販売
住所: 静岡県袋井市小山219番地
設立: 1924年
テュフズードによ る提供サービス: GLOBALG.A.P (グローバルギャップ)
温暖な気候と豊かな土地、美しい清流を有する静岡県袋井市。この恵まれた地域の特産品として長く生産されているのがマスクメロンの有名ブランド「クラウンメロン」です。生産する「静岡県温室農業協同組合クラウンメロン支所(以下、クラウンメロン支所)」は2014年11月、テュフズードを通じ適正農業規範の世界標準であり、食品安全の国際規格であるGFSI承認規格の一つ「Global G.A.P」を認証取得しました。今後は「Global G.A.P」の認証取得を輸入の必須条件としているインドネシアへ向けて直販を開始し、新たな収益源を確保したいとのことです。
日本市場から海外へ
「昨今の市場価格の低迷や原油高の高騰を受け、クラウンメロンの生産者は苦しい立場に追い込まれています。そこで低迷する日本市場から海外へと販路の拡大を目指したのです。それには食品安全の国際規格として認知されるGlobal G.A.Pの認証取得が欠かせませんでした」とクラウンメロン支所の鈴木和雄支所長は語ります。認証取得を先導した石黒一信氏は「実際に取ろうと決めた2014年6月から実質3カ月強で認証取得を達成しました。通常なら1年をかけて取得するものらしいのですが、インドネシア政府の2015年の輸入枠を獲得するには2014年の11月には申請を終えなければいけません。時間の制約が最も厳しかったのですが、農業コンサルタント、市役所、テュフズードの協力のもと実現することができました」と当時を振り返ります。
クラウンメロンはイギリス貴族であるラドナー伯爵邸の農場で育てられていたものがルーツとされ、静岡県では大正13年に小林・鈴木両氏により生産を開始。その美しいフォルムやみずみずしい味わいが消費者に受け、当時から高級果物として認知されてきまいた。
石黒氏は静岡県でメロン栽培が盛んな理由を以下のように語ります。「メロン栽培は日射量が一番重要なのと、乾燥を非常に好みます。静岡県は晴天率が高く、冬場は乾燥した風が吹くため、メロンの一大産地として栄えてきました」。また鈴木氏はクラウンメロン支所を次のように解説します。「クラウンメロン支所はメロンしか生産しない単品農協です。職員も一部を除いて生産者で構成される生産者団体の組合で、そこがJAとの大きな違いです。現在は225農家が加盟。販路の9割は国内市場で、東京、名古屋、大阪、北九州など全国13の市場にクラウンメロンを送り出しています」。
高級果物「クラウンメロン」の単品農協として日本全国の市場と取引を行うクラウンメロン支所。認知度の
高い商品を扱う同支所がGlobal G.A.Pの認証取得を目指した背景を、鈴木氏は次のように語ります。「クラウンメロン支所はバブル最盛期に800人も組合員数がおり、売上は年間100億円にものぼりました。しかしバブルがはじけた後は市場価格が低迷し、売上も年々減少していきました。さらに悪いことに、メロン栽培に欠かせない燃料の高騰が追い打ちをかけたのです。燃料は平成の初頭あたりに1klあたり2.5万円ほどでしたが、現在は1klあたり9万円にもなっています。農業というものは燃料代の高騰をそのまま売価に上乗せすることができません。そのまま被ったという状況で利益率がかなり下がっています。こうなってくると経費削減だけでは対応できませんよね。現在の加盟組合員数は225人、売上は約33億円まで落ち込んでいます」。
鈴木氏は現状打開のために農業コンサルタントとともに対応策を検討しました。その過程でインドネシアのバイヤーを紹介され、今回の販路拡大が決まったのです。
鈴木氏は語ります。「今まで海外市場への直接販売はやったことがありませんでした。なぜなら、我々の商品はまず仲買企業や小売り企業が買ってくれて、そこから消費者の元に届けられます。海外も同様に、日本の仲買企業を通してすでに流通しているケースが考えられます。そうなると我々の直接販売した商品と、仲買企業に購入いただいた我々の商品がバッティングしてしまうかもしれないのです」。では、なぜインドネシアでは直販が可能だったのか、その理由を鈴木氏は次のように語ります。「インドネシアではGlobal G.A.Pを認証取得していない業者からは輸入ができないことになっており、そこが参入障壁となっていたのです。そこで我々は逆にGlobal G.A.Pを認証取得し、インドネシアへ直販を開始しようと考えました」。
さらに石黒氏はインドネシアへの販路拡大の狙いを次のように語ります。「インドネシアの人口は約2億人。
その中の2割が富裕層であると言われています。卸し先のジャカルタには2千万人の人口がいますので、我々の
ターゲット層としては400万人規模にもなるという計算です。また、こちら側で値段を付けられるということも大きなメリットであると考えています。市場流通だと市場で競ることにより価格が初めて決定します。高い時はいいのですが、逆に安い時もあります。そうすると園芸施設にとっては先が見えないし、投資もできません。海外への直販であればこちらで値段を決められますから、ある程度予算の計画が立てられるのです」。
Global G.A.Pを認証取得するにあたり、クラウンメロン支所はテュフズードジャパンを認証機関として選択しました。選択した最大の理由は3カ月という短期日程に合わせられるかどうかにあったと石黒氏は語ります。「Global G.A.Pを認証取得しようと決まったのが2014年の6月です。一方、インドネシアで2015年1月~6月の輸出枠を取ろうとすると、前年の12月中には審査を通らないといけません。そうすると最低でも11月初旬には取得しておかないといけないことが分かったのです。そこで3カ月で取ろうという話になりました。テュフズードはこちらの事情を理解し早い対応をしてくれました」。
幸い、クラウンメロン支所は日頃から勉強会を開催するなどして生産、販売、苦情処理などGlobal G.A.P取得に必要なシステムを作り上げていたため、認証取得はスムーズに進みました。メロンだけの生産という単品農協であったというのも認証取得に有利な状況であったようです。
Global G.A.Pを認証取得するまでの一般的な流れは、1.規格の勉強、2.内部監査員の育成、3.認証機関やコンサルタントの選択、となっています。具体的には初回審査までに「Global G.A.P認証生産者グループの規約づくり、過去3カ月の栽培記録、各種リスク評価実施と文書作成、労働安全・衛生管理の手順書、水質/土壌/残留農薬検査の実施、事務局と各メンバーに対する内部監査の実施」などを準備する必要があります。認証取得までには外部からの情報を蓄積し、トレーニングを受講することが効果的ですが、クラウンメロン支所の場合は日常的に勉強会を開催するなどして食品安全に取り組んでいたため、認証取得までに大きな労力を要さなかったといいます。
その背景を石黒氏は次のように語ります。「Global G.A.Pを取得するにあたって、最初から審査までの下地はできていました。クラウンメロンは高級果実ということもあり、安心安全のメロンをつくるという意識が元々高かったのです。例えば農家各々の栽培方法はある程度公開していますし、美味しさの追求のために講習会も毎月開催。生産部では栽培管理の指導もしています。もちろん、美味しさだけでなく農薬などの食品安全の話にもなります。私たちの業界では残留農薬が0.01ppmでもあればアウトです。例えるなら“25mのプールに対するおおさじ一杯”の世界であり、10年前の農政改革以降それが徹底されています」。
石黒氏は、あえて苦労した点をあげるとすれば時間と作業庫の片づけだったと語ります。「なにしろ3カ月
間しかスケジュールがありません。井戸水などの検査項目は実施する官公庁のスケジュールに左右されますし、講習会でも半日間は認証取得予定の組合員を拘束する必要があります。農薬、機械の取り扱い、救命救急など講習ごとに時間の調整に奔走しました。ほかには作業庫の片づけが大変でしたね。農場は物を置くところがたくさんあって、昔の農薬など不要なものがたくさんあります。そちらも短期間で片付ける必要がありましたから」。一方、規約づくりや提出書類の準備には、関係各所の協力を仰いだとのことです。
その様子を鈴木氏は次のように語ります。「まず規約づくりにはコンサルタントの方に協力いただきました。いきなり農場採点を行い、ここでは実際のGlobal G.A.Pと少し違う4段階方式を採用しました。採点基準は「まったくやっていない」「そこそこやっている」「もうちょっと」「完全にやっている」の4つです。私たちには、この基準が分かりやすく取り組みやすかったため、Global G.A.P取得に向けやる気に繋がったのだと思います。ひとつの農家を基準にして採点するのですが、当然、採点する側の組合員で点数にバラつきがでます。そこを講習会ですり合わせていきました。
申請書類の準備に関しては市役所の協力を得ながら進めました。もともと温室栽培をされていた方が農政課に来られていたということもあり、一切をお願いするかたちでした。やはり協力者の方々がいなければ、私たちの力だけでは難しかったと思います」。こうしたコンサルタントの指導もあり、テュフズードの審査員による審査は順調に始められたといいます。
鈴木氏はテュフズードの審査員について次のように語ります。「審査員についてはとても満足しています。我々も知らないような知識を与えてくれましたし、その場でGlobal G.A.P規格についての説明もしてくれました。事前に話し合いの機会も設けていただけたので、こうしていきたいという我々の要望にも沿っていただいたと思います。非常に穏やかな方で話しやすかったですね」。
審査も概ねスムーズに進んだようでしたが、僅かながら改善点もあったようです。「最初に訪問した農家では、聞き取りに5時間ほどかかりました。審査員の方も温室は初めてだったようで、規約を読みながら慎重に進めていましたね。改善点に関してはほとんど無かったのですが、あえて挙げるなら“手洗い”などの表示関係のほか、蛍光灯の飛散防止のためにカバーを付けたり、市販の殺虫剤を置いていることを指摘されました。特に殺虫剤はいつどこに置いたかも記録しておかなければいけません。しかし概ね当たり前のことが多いので、素直に聞くことができました」。
インドネシアへの販路拡大はもちろんですが、それ以外にも効果は表れ始めています。例えば昨年暮れの
お歳暮シーズンのことです。新聞報道でGlobal G.A.P取得の報道がされたのですが、その直後に顧客から、どうせならGlobal G.A.Pを取得したところから買いたいと申し出がありました。早速ブランドの向上につながっていると感じましたね。最終的には安心安全への信頼度がブランドの向上につながると考えています。見えないところに気を遣うことが大切です」と鈴木氏は語ります。
また国内やインドネシア以外にも動きがあるようです。「今回のインドネシアが成功したら、次はイタリアのミラノ万博へ出品する予定です。ミラノ万博では8月に静岡県デーがあるのですが、そこへクラウンメロンを持っていきたいと袋井市に手をあげていただいています」とすでに先を見据えています。
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