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ケーススタディ

ナブテスコ株式会社

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国内初!ISO/ASTM 52920準拠のAM製造サイト認証を取得

積み上げたAM技術で、AMの量産適用を目指す


AM(Additive Manufacturing、3Dプリンティング、積層造形)は、高付加価値製品や少量多品種を効率良く製造できる技術として知られている。また製品ライフサイクル全体で見た場合、カーボンフットプリント削減の可能性があることから、サステナブルな製造技術としても注目されている。

一方でAMは比較的新しい製造技術であるため、品質保証の仕組みに関する知見不足が課題とされてきた。2023年6月、待望の国際標準規格ISO/ASTM 52920:2023が正式発行されたことで、AM技術の最終製品や量産品への適用が今後加速すると予測される。

そんなAM品質保証元年とも言える2023年6月、ナブテスコ株式会社は、国内初のAM製造サイト認証(ISO/ASTM 52920準拠)*をテュフズードから取得した。会社におけるAM技術の位置づけ、認証取得の経緯、そして今後の展望について、大西大氏(ナブテスコ株式会社 技術本部 M&Mエンジニアリング部 AM開発グループリーダー)にお話を伺った。

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2023年7月、認証授与式にて (左から:ナブテスコ株式会社 理事 技術本部副本部長 兼 イノベーティブエンジニアリング部長 大橋功氏、テュフズードジャパン株式会社 代表取締役社長 アンドレア・コシャ、ナブテスコ株式会社 代表取締役社長 木村和正氏、同社 技術本部 M&Mエンジニアリング部 AM開発グループリーダー 大西大氏、同社 技術本部 M&Mエンジニアリング部 部長 阿部賢史氏)

*AM製造サイト認証とは -AM製造のプロセスおよび製造サイトのISO/ASTM 52920を中心とした国際規格への準拠を、第三者認証機関として証明するテュフズードの監査・認証サービス。国際標準規格 ISO/ASTM 52920:2023 の正式発行を受け、AM製品の普及における品質保証の課題解決策として本格的に提供開始した。監査に合格すると、第三者認証機関 テュフズード からAM製造サイト認証書および認証マークが発行される。

 


DX技術推進の一翼を担うAM開発グループ

素早いプロトタイプ製造で開発を支えてきた


ナブテスコ株式会社(以下ナブテスコ)は、機械コンポーネントのリーディングカンパニーとして知られている。「うごかす、とめる。」モーションコントロール技術を軸とし、精密減速機、油圧機器、鉄道車両用機器、航空機器、舶用機器、商用車用機器、自動ドア、そして包装機と、8つの事業を展開する。京都市のR&Dセンターに拠点を持つM&Mエンジニアリング部は、シミュレーション技術およびAM技術といった先端技術でDXを推進する部隊だ。

Nabtesco「製品を企画・設計するところから、保守部品を出荷しながら何年も作り続けるというところまで、長い”製品のライフサイクル”があります。我々M&Mエンジニアリング部は、そのライフサイクルの色々な部分を、デジタル化して進めるという役割を担っています。デジタルで設計をし、シミュレーションをし、AMでプロトタイプを作って…トータルでDX技術を推進する役割を持ちます」(大西氏)

AM技術およびAM製造は、ナブテスコの中で、研究開発の一つとしてスタートしたという。「AMという技術が会社の中になかったものですから、どういった技術なのか?どういった設計ポイントが重要なのか?ちゃんとした物を作るにはどうしたらいいのか?ということからスタートしました」

大西氏は「現在はノウハウが蓄積され、技術が高まり、社内のプロトタイプは作れるようになっています。製品づくりの過程で、我々がプロトタイプをAMで作ってパパッと納める…という具合ですね」と語る。製造技術としてのAM技術活用法の特長の一つは、ラピッドプロトタイピングだ。そのAM固有の特長と、培ってきた技術を生かし、ナブテスコの製品づくりを支えてきた。

 


3Dプリンタで作った部品は怪しい?

AM量産適用への課題は、「コスト」と「品質保証」へのシビアな要求


一方で、AMの量産品への適用を見据えたときに、まず課題となるのがコストだ。「たとえば普通の機械加工のドリルですぐに開けられるような穴を3Dプリンタで作ろうとすると、単純な穴であってもゆっくりゆっくり、50ミクロンずつ積層する…当然、高くつくんです」と大西氏は説明する。「目の付けどころがすごく大切で、普通の機械加工だと作りにくいような構造のものをAMで作ることで、AMがだんだんお得になっていきます」

AMで製造して価値があるものを、AMで製造する。量産を目的に据えた場合、AMに適した製品を見極めることが重要*だ。

またAMの量産適用の壁として立ちはだかるのが「品質保証」だ。大西氏は力を込める。「お客様は、AMで作った部品は怪しい、と思っているんです。形としてはできているけど、表面がザラザラだし、強度は大丈夫なのかな…と。AMを製造技術として用いるうえで、何をしたらお客様に信用してもらえるかということをずっと考えていました」

*近年、欧米では航空、宇宙、エネルギー、化学プロセス、自動車、鉄道などの分野でAMの量産適用が進んでいる。

 


品質保証を前提とした国際標準規格が存在しなかったAM

テュフズードのAM製造サイト認証取得に向けて


国際標準規格ISO/ASTM 52920の発行以前、品質保証されたAM部品を一貫して製造するための国際規格は、世の中に存在しなかった。大西氏は次のように説明する。

「3Dプリンタのように、薄く粉体を塗り広げてレーザーで加熱してバチバチと焼き固めるという工法は、一部の分野では量産技術として使われてはいるものの、幅広く使われているものではありませんでした。少し似たような技術で言えば、たとえば、粉体を温めて固めるとか、モノとモノを溶かしてくっつけるとか、そういった工法はあるんですが…。」

そんな中、AM品質保証に関する規格が発行されること、そしてその規格に準拠したテュフズードのAM製造サイト認証を知った大西氏。「お客様に信用していただくための手段の一つが、他人から、『あなたの会社のAMでの作り方は大丈夫ですよ』と第三者に証明してもらうことだと思いました。いくら信用してもらおうと思っても、データだけではなかなか表現できませんので。社会的な信用を得るという意味で、テュフズードさんに認証してもらうのがいいなと」

認証取得を進めるにあたり、当時技術本部長を務めていた木村和正氏(現代表取締役社長)に、認証取得の意義を伝えたという。当時を振り返る大西氏は、次のように語る。

「どんな工法でも作り方のイロハがあるが、AMにはそれがないのか?と当時木村から聞かれたんです。今はないが、これから規格が出るらしい。認証が取れれば、お客様も品質保証に安心してもらえると思います、と話をしました」

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AM製造の「最大公約数」が公開されたことは大きい。

国際標準規格 ISO/ASTM 52920の意義


2023年6月にようやく正式発行された、国際標準規格ISO/ASTM 52920:2023。既存の品質マネジメントシステムでは想定されていなかった「AM特有の製造プロセスや変動要因」を考慮している。その意義について大西氏は次のように語る。

「やっぱりISO/ASTM 52920という、AM特有の認証には価値があると思います。粉体の焼き固め方や、材料の取り扱い方法は、従来の工法を基本にしている従来の品質マネジメントシステムにはありません。52920という規格があることで、(本規格に準じた)認証を取った会社はちゃんと管理して製造していることがわかりますので」

また、本規格は国際標準化機構ISOとASTM Internationalのジョイントグループによって策定され、その策定過程にはテュフズードも関わってきた。AM製品の買い手側が最低限満たしてほしいと考える「AMの品質保証への要件」が盛り込まれているのが特徴だ。

「AMで部品を作ろうというとき、部品メーカーはこれまでお客様に直接『(作り方を)教えてください』と聞いていたんです。そのためにはお客様と密に関係を築いて、ノウハウを積み上げることをしないと…。それが今回、52920という規格として全世界に公開されたというのは大きい。最大公約数となる製造の仕方が公開されたということですから」

 


地道に積み上げてきたAM技術が、自ずと認証に耐えうるものに。

お客様の独自要求のみ「プラス」で対応できる強み


その最大公約数となる規格に則った製造体制と運用能力を持つことを国内で初めて証明したナブテスコ。AM技術およびAM製造の第一人者になったことへの想いはどのようなものだろうか。

「実は、規格を初めて見たとき、驚くことはあまり無かったんです。自画自賛になってしまいますが、これまで地道に積み上げてきたことが、結局規格になっていたという印象でした。もちろん、必要なことを確認できたのは重要だと思います。ただ、しっかり方向性を見定めて、まじめに技術開発していたこともあって。認証に耐えうる、認証に認めてもらえる技術を自ずと構築できていたと自負しています」

AM開発グループの日々の真摯な取り組みが、規格・認証の要件を満たす基盤構築に自然とつながっていたという。第一人者になるべくしてなったと言えるだろう。AM技術を検討する部品購入者に対しては、次のように説明する。

「お客様に対しては、AMによる作り方を、我々サプライヤーに対してご自身で頑張って規定する必要はなくなりましたよ、と伝えたいです。最大公約数に沿った基盤はすでに社内にあるので、お客様には独自に要求したいことだけをプラスしてもらえれば良くなりました。」

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認証取得後、わずか5分の社内向けプレゼンですぐに事業部が動き出した

主要事業への大きな貢献を目指す


NabtescoテュフズードのAM製造サイト認証を取得したことで、社内ではどのような反応があったのだろうか。大西氏は顔をほころばせながら話す。「認証が取れたことを、木村(社長)も含め、社内カンパニーの社長たちの前で5分間プレゼンしたんです。それですぐに、ナブテスコの主要事業がAMの量産適用に向けて動き出しました。たった5分ですよ。認証取得にこんなに威力があるとは思いませんでしたね」

認証取得後、短いプレゼンテーションの直後から具体的な話につながり、AMの量産適用への道が敷かれたという。AMへの想いについて、改めて大西氏に伺った。

「(国内でAM技術の重要部品への適用がなかなか進まないことについて)実績が少ないことや、プロセスが満たせていれば安心できるという論理が通りにくいことが、その理由かと思います。ただ、我々のAM技術には、ナブテスコの事業に大きく貢献するポテンシャルがある。そしてAMはサステナビリティに貢献できる技術です。それを信じて私はやっています」

国内で先陣を切った、ナブテスコのAM技術。社内の研究開発と各製品事業部の懸け橋となり、ひいては国内のAM技術の量産適用をリードする―。そんな輝かしい未来が予見されるインタビューになった。


関連リンク

ニュース:テュフズードュフズード、ナブテスコ社に国内初のAM製造サイト認証を発行

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