TOTOケーススタディー

ケーススタディー

TOTO株式会社

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TOTOケーススタディー

社名: TOTO株式会社 

事業内容: 衛生陶器やシステムトイレ、温水洗浄便座、システムバスルームなど水まわりを中心とした住宅設備機器の生産・販売

住所: 福岡県北九州市小倉北区中島2-1-1

テュフ ズードによ る提供サービス: IEC60335-1に関する評価試験・認証サービス

「おしり」を守る安全性を追究家電安全規格(IEC 60335-1)に適合

「機能安全」を踏まえた設計・評価に対応、保護電子回路(PEC)を実用化ウォシュレット®の世界展開へ弾みをつける

 

 

トイレからイノベーション

伝統の技が光る「衛生陶器」と、多彩な機能を実現する「電気・機械」の融合製品である温水洗浄便座。そのトップランナーのTOTOは、世界市場でさらなる躍進をするべくグローバル展開に力を注いでいる。そこでTOTOが重んじるのが、デザイン性や機能性もさることながら、製品の安全性である。トイレで用を足すとき、「おしり」を洗うとき火傷することがあっては一大事である。

 

世界に安心・安全なウォシュレットを届けたい

TOTOがこだわったのが、家庭用電気製品の国際安全規格「IEC 60335-1」への適合である。「認証」という枠組みで、第三者認証機関から国際安全規格への適合のお墨付きを得られたら、世界市場で安心して受け入れられる素地が整う。

そのIEC 60335-1への適合と認証取得は、挑戦に次ぐ挑戦だった。TOTOが目指す高い安全性の実現には「保護電子回路(PEC : Protective Electrical Circuit )」の採用が不可欠だ。IEC 60335-1ではその採用に伴って「機能安全」のコンセプトを踏まえた設計・評価を要求する。しかし従来、同規格を採用する製品において、保護電子回路(PEC)や機能安全を踏まえた開発の事例はみあたらない。そこでTOTOは、テュフズードを第三者認証機関としてパートナーに選んだうえで、その前例のない開発に取り組み、ゼロから創りあげることに成功したのである。世界のなかでも先駆的な事例といえるだろう。

TOTOは世界市場でさらなる飛躍を遂げるべく、開発品に対してTÜV認証を取得した。世界のどこの安全規格にも適合できる世界展開のプラットフォームと位置付けた。

 

世界に受け入れられる安心・安全な製品を創りたい

「だからこそIEC 60335-1への適合は大前提でした」と岡野慎司氏(ウォシュレット品質保証部 グループリーダー)は語る。

温水洗浄便座は、極めて高い安全性が要求される製品である。おしりを洗う温水が想定を超える高温となり、おしりが火傷する事態は絶対に避けなければならない。折しもTOTOは日本のトイレ文化の世界への発信を強化し、グローバル展開を加速させている。製品の安全性について最重要視するTOTOは、米国や中国、韓国など出荷先の安全規格への適合はもとより、従来からIEC 60335-1へ適合する製品開発を進めてきた。

ところが2013年のこと、ある第三者認証機関から思いがけない情報がもたらされる。「瞬間式の温水供給方法を採用するTOTO製の温水洗浄便座は今後、IEC 60335-1に不適合になる可能性がある」というのだ。

 

保護電子回路(PEC)に対する厳しい安全基準

この情報がTOTOにもたらした衝撃は大きかった。IEC 60335-1に不適合ともなれば、TOTOの世界戦略の出鼻をくじかれてしまう。

調査を進めていくと、その背景が徐々に明らかになってきた。世界の時流として安全規格の厳格化が進んでいるなか、IEC 60335-1も改版が進み、より厳密な安全水準が求められるようになったことにあった。温水洗浄便座は通常、温水でおしりが火傷するのを防ぐために、想定以上の温度に上昇した場合に温水の放出を止める電磁弁と、電磁弁の開閉を制御する保護回路を備えている。TOTOは従来から、瞬間式とよぶ温水の供給方式の保護回路には、応答特性に優れた半導体集積回路(コンパレータ回路)を採用してきた。故障への備えとして、半導体集積回路を多重化させていたものの、その構成だけでは新たな安全基準を満たさないことが分かってきた。改版したIEC 60335-1に基づく評価プロセスでは、ICなどの電子部品で構成する保護回路は特に「保護電子回路(PEC)」と明確に位置付けられ、ディスクリート部品(単体素子)で構成する保護回路に比べてより高い安全水準を求めるようになったのである。

このIEC 60335-1の改版は、家電業界における設計の現場に、それなりの影響をもたらすものだった。保護回路を搭載する家電製品においてIEC 60335-1適合を優先するために、ICなどの半導体集積回路で構成する保護電子回路(PEC)の利点を捨てて、ディスクリート部品で構成する方法を選ぶケースさえ現れてきたのである。

 

高い安全性をとことん追求

TOTOは、保護回路をディスクリート部品で構成する流れに汲みしなかった。従来から採用する応答特性に優れた半導体集積回路を維持しながら、IEC 60335-1への適合を目指す決断をしたのだ。

「代替案も慎重に検討しました。そのうえで保護電子回路(PEC)を採用する方針を決断しました」と峯 浩二氏(エレクトロニクス技術本部 技術主査)は当時の判断を振り返った。

もともと温水洗浄便座は、温水の供給方式によって「瞬間式」と「貯湯式」の二つの方式がある。TOTOは従来から瞬間式の製品に対して、保護電子回路(PEC)に相当する構成を採用してきた。瞬間式はおしりを洗うその瞬間に水を温め、ノズルから噴出する方式である。もう一つの貯湯式に比べて小型化に優れており、結果として便座のデザイン性や機能性を高められる。しかしその異常時には、吹き出す温水が急に高温になったり、最悪の場合は突沸したりして、大事なおしりが火傷するリスクを生じてしまう。このため異常温度の温水を直ちに止水できる、応答特性に優れた電子部品を使う保護回路を採用し、安全性をより高めているのである。

実は、保護回路をバイメタル(Bi-metallic strip)と呼ぶディスクリート部品で構成すれば、IEC 60335-1においても保護電子回路(PEC)と判断されることはなく、適合しやすくなる。しかもバイメタルは、止水制御に高い応答特性を必要としない貯湯式にながらく採用してきた実績もある。

しかし「先人が築いてきた安心・安全をとことん追究するTOTOの原点に立ち返り、瞬間式のウォシュレットに保護電子回路(PEC)を採用する方針で、開発陣が一丸となりました」(岡野氏)。

 

知識も経験もないゼロからの出発

IEC 60335-1適合の保護電子回路(PEC)を開発する決断をしたものの、その実用化は決して平坦な道のりではなかったという。

なぜ困難を伴うのか。それは保護電子回路(PEC)の採用は事実上、従来まで考慮が不要だった「機能安全」のコンセプトを踏まえた設計と評価を進める必要があるからである。「前例のない技術開発のため、知識も経験もなかった。社内にも社外にも、参照できる事例がない。本当にゼロから組み立てる必要があった」と松田 泰宏氏(エレクトロニクス技術本部)は当時を振り返る。

 

ゼロからの出発

開発当初は、規格の内容を正しく理解するところから始める必要があった。 IEC 60335-1において、どのような構成が保護電子回路(PEC)に位置付けられるのか。どのような安全評価試験をする必要があるのか。TOTOはその段階から取り組み始めた。それだけでなく、保護電子回路(PEC)の設計や評価に機能安全のコンセプトに基づいた設計と評価を踏む必要があることさえ、当初はまったく認識していなかったという。この困難を乗り越えるパートナーとして、TOTOが選んだのがテュフズードである。並行して進めていた試験や認証に関する技術的なやり取りを通じて、その技術力や対応力への評価を高めていた。ゼロから立ち上げたこのプロジェクトについても、推進力をもたらす期待を抱いたのである。

 

「完璧に適合した認証」を取得

第三者認証機関であるテュフズードは、設計を指南するコンサルティング・サービスを提供していない。そこでコンサルティングに相当する内容から一線を引いたうえで、規格を解説するワークショップを開催したり予備評価を実施したりして、徹底的な議論を重ねたのである。TOTOはその設計や仕様に対して、何度も何度も「不適合」の判断をテュフズードから突きつけられた。そのたびに規格に立ち返り、その解釈や理解を深めていった。IEC 60335-1適合の保護電子回路(PEC)は、極めて先進的な取り組みであったため「テュフズードからは当初から『誰がみても疑いのない完璧に適合した認証となるよう評価します』と言われました。厳しいやり取りのなかで、得た理解も多かったと思います」と松田氏は語る。

TOTOはテュフズードとの議論を通じて、保護電子回路(PEC)には、コンパレータ回路による安全回路だけでなく、その故障検知のためにマイコンとソフトウエアを追加実装することが現実解という判断に至った。この場合にIEC 60335-1附属書 R : ソフトウエア評価(Annex R:Software Evaluation)が必要になる。これこそ機能安全を踏まえた評価にほかならない。TOTOはさらに険しい道のりになることを理解したうえで、設計と評価のプロセスに機能安全のコンセプトを導入した。テュフズードは、機能安全に基づく評価に対して幅広い経験と実績を有している。産業機器マーケットにおいて、機能安全に関連する数多くの認証や評価を手掛けているからだ。プロジェクトを円滑に進める知見に長けており、TOTOのプロジェクトにも強力な推進力をもたらすことになった。

 

ついに保護電子回路(PEC)を実用化

TOTOは、創立100周年にあたる2017年「ネオレストNX」を発売した。長年にわたり伝承されてきた職人の技が生み出す「衛生陶器」と、先端の安全性と多彩な機能を実現する「電気・機械」が見事に融合したフラグシップ製品である。

IEC 60335-1に適合した保護電子回路(PEC)の実用化である。もともと高い安全性と信頼性をさらに高めた温水洗浄便座として最初の製品であるだけでなく、IEC 60335-1にかかわる家電業界において、先頭を走る成果である。TOTOはこの成果を、グローバル展開の大きな推進力として活用していく構えだ。各国の安全認証を申請する際に必要となるCB認証を、テュフズードを通じて取得した。

 

世界展開モデルに認証品を搭載

ウォシュレットの製品化から45年を経て、その累計出荷台数は、実に全世界で累計4,000万台を超えた。世界展開モデルへ、この認証品の順次搭載を進めている。

 

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