株式会社ジャクエツ
株式会社ジャクエツ
遊具をはじめとする子ども向け製品には、高い安全性が求められる。特に欧米では、子どもへのリスクを最小限にとどめるために厳しい基準が設けられている。
このたび株式会社ジャクエツは、海外展開を見据え、4つの遊具製品:BANRI, HOUSE, OMOCHI, OMOCHI MINIのテュフ認証を取得。本認証は、「EN 1176-1:2017 遊具の安全のための欧州規格」への適合を証明し、同製品が厳しい安全性の基準をクリアしたことを示す。
ジャクエツにおける品質保証・認証の位置づけ、認証取得までの道のり、そして今後の展望について、徳本達郎氏(株式会社ジャクエツ代表取締役CEO)と吉田薫氏(開発本部長CDO)にお話を伺った。


(写真左) 2024年4月、認証授与式にて(場所:株式会社ジャクエツ 東京本社)
(写真右) テュフズードよりテュフ認証を取得した4つの遊具製品。上段左からHOUSE, OMOCHI MINI、下段左からOMOCHI, BANRI
株式会社ジャクエツ(以下、ジャクエツ)は、「あそびの環境をデザインする仕事」を生業とする、幼稚園・保育所向け教材教具のリーディングカンパニーだ。大正5年(1916年)に福井県敦賀市で創業された幼稚園に端を発する。
「ジャクエツの名前の由来は、若狭と越前からです」と徳本達郎氏(代表取締役CEO)は語る。「敦賀は、古くから日本の表玄関として栄えてきました。明治には敦賀からパリ行きの切符が買えたそうです。敦賀港からウラジオストク、そしてパリへと通じていたんですよ」
日本と世界を結ぶ国際港として古代から商業の中心となり、今年3月には北陸新幹線も開通した敦賀で誕生したジャクエツ。現在では乳幼児施設向けの教材教具の企画・製造から、子どもたちに関する情報やノウハウを活かした魅力的な街づくりやコンサルティングまでを手がける。
ユニークかつ美しいデザインが特徴的な遊具製品を展開するジャクエツだが、品質保証の面でも力を入れてきた。幼児・児童のみならず乳児も含め、各年齢層に個別対応したものづくりをするため自社独自のJQ(Jakuets Quality)遊具安全規準を制定し、多くの点検項目をもとに、遊具や教材教具の製造を手がける。品質マネジメントシステム認証ISO 9001のほか、2014年には子どもの安全に関する業界横断型の認証制度であるCSD認証も取得している。
近年では、その経験を活かし、商業施設などのコンサルティング業務も行う。「たとえば商業施設は建築基準法に則って建てられるわけですが、子どもへのリスクが十分に想定されているとは言えません。子どもが入れてしまう隙間があるとか、子どもがぶつかりやすい場所に角張った部分があるとか…。そういった危険を想定し、事故を減らしていけるように、弊社のマニュアルを参考にしてもらいながら、本当の意味で安全な場所づくりを一緒に考えていきます」と徳本氏は語る。子どもの安全性担保に真摯に取り組んできたジャクエツだからこそ、説得性をもって提供できるサービスだ。
また国内のみならず、海外展開も視野に進めてきた。「幼児教育というとモンテッソーリやフレーベルなどが有名で、遊具についても海外から多く輸入・販売されています。ジャクエツとしては、『日本のものづくり世界発信』の取り組みの一つとして、日本の遊具や幼児教育メソッドの良さを海外に発信していきたい。自社内にはPLAY DESIGN LABを設置し、国内外のデザイナーや研究者と一緒に新しいデザインの遊具を開発しています」(徳本氏)
一方で遊具の海外展開を見据える中で課題となったのが、海外に対して、製品の安全性を証明することだった。吉田薫氏(開発本部長CDO)は次のように語る。「遊具の品質と安全は、デザイン以上に注目される大事な部分です。これまでは国内のガイドラインや自社の安全基準にしたがって制作してきましたが、国際的に認知されている規格ではありませんので、グローバルで通用する認証を取得したいと考えていました」
2019年頃から「EN 1176-1:2017 遊具の安全のための欧州規格」(以下、欧州規格EN 1176)への適合を見据えて認証取得を検討し始めたものの、新型コロナウィルス感染拡大の影響からプロジェクトは中断。また認証対象は独自性の強いユニークな遊具のため、認証取得のハードルは高かった。
欧州規格EN 1176は、欧州で販売するためには適合が必須となる規格。適合するためには、材質の安全性1や構造上の安全性をはじめ、子どもの特性等を想定したあらゆる安全性の基準をクリアする必要がある。また認証書を維持するためには、毎年の工場監査が必要だ。なお本規格はEU加盟国の他、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなどでも幅広く採用されているため、海外展開には強力な後押しとなる。
「そんな中で2022年に日本知財標準事務所様と出会い、世界発信をしていくにあたって改めて品質管理方法や書類内容を見直すところから深く関わっていただけることになり、道が開けました。そして認証審査については、ドイツから審査員の方に来ていただくという形で、テュフズードジャパン様にお願いできることになりました」(吉田氏)
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1.落下に対する保護やはまり込みに対する保護など
今回の認証取得以前から、高い品質管理体制を有していたジャクエツ。ISO 9001も取得しており、「JQマネジメントシステム」「仕入れ先出荷検査表/ジャクエツ製品検査表」「設計開発手順書」「クレーム手順書」「購買仕様書」「取扱説明書」「点検マニュアル」等、多くの管理書類も整備されていた。これらの英文化のほか、苦労したのは欧州規格EN 1176で要求されていることへの対応方法の検討、そして自社基準との差分だったという。
「今回の認証対象が抽象的な形をしたFRP製の遊具のため、前例もなく、どのような基準を適用して考えたらよいのかの検討が困難でした。さらに、欧州規格EN 1176とJQ遊具安全規準の考え方の違いを理解する必要もありました。たとえば対象年齢区分の有無や、強度検証時の荷重・利用人数の考え方の違いなどです」と吉田氏は語る。
遊具の安全性を示す際に大切な基準の一つである強度。ジャクエツでは、これまで子どもの体重をもとに強度検証を実施していたが、欧州規格EN 1176では遊具の公共性に鑑みて350kgの耐荷重が求められていることがわかった。
「ヨーロッパ基準の耐荷重を聞いて驚きました」と当時を振り返りながら、吉田氏はにこやかに話を進める。「遊具は公共の場に置かれるものだから、お父さんやお母さんなど、大人が乗ることも想定しなければならないという考え方なんですね。社員みんなで遊具に乗って確かめましたよ」
晴れて2024年に、遊具4製品:BANRI, HOUSE, OMOCHI, OMOCHI MINIのテュフ認証 2を取得し、欧州規格EN 1176への適合を証明したジャクエツ。認証取得を経て今思うことを伺った。
「さきほど挙げた基準の細かな違いなど、国際的な規格について改めて確認ができ、新たな視点で製品を評価できるようになったことが大きな学びです。テュフズードの審査では、厳しい指摘もありましたが、ドイツ人の審査員の方には丁寧に見ていただきました」と吉田氏は語る。
「また設置手順書やカタログなどを、お客様にとってさらに親切なものに整備する機会にもなりましたので、勉強になりましたし、サービスレベル向上の面でよかったと思います。子どもたちが使うものだからと本気でこだわって作った良いものを使ってほしい、とお客様にはお伝えしたいですね」(吉田氏)


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2.製品に安全性基準や機能の有効性が認められたことを示す国際的な認証。テュフズードは、製品の安全性試験と工場監査の二本立てで、組織が継続的に安全な製品を製造できるかを確認したうえで認証書を発行する。
今後の展望について、徳本氏は次のように語る。「すべての成果は企業の外にある、とドラッカーは言っています。企業はどうしても利益や売上などが目標になりがちですが、企業の活動によって社会がどう変わるのか?という視点は持ち続けていたいですね。自社製品で事故が起こらないように、ということももちろん大事なのですが、子どもの事故を社会全体、トータルで減らしていくというのを会社として掲げているんです。一方で起きることは、他方でも起きる可能性がある。ジャクエツの知見を、少しずつ社会に共有していきたい」
「この認証取得で、海外でも実際に導入していただける条件が一つ整いました。これからは、日本の幼児教育の考え方を、優れたデザインと合わせて、世界に発信していきたいと思っています」(徳本氏)
子どもが全力で「あそび」に夢中になれるのは、子どもの安全性が担保されてこそ。敦賀の地でつくられた安全かつ遊び心あふれる遊具で、世界中の子どもたちが豊かな感性をはぐくむ未来が予見できるインタビューとなった。


Title image "Untitled (The Lined Office in Matsubara #639)", 2024 ©︎ Gottingham, Image courtesy of Jakuets, Schemata Architects and Studio Xxingham
ニュース:テュフズードがジャクエツの遊具4製品にテュフ認証を発行
ホワイトペーパー:玩具の安全要件ー安全なおもちゃへの取り組みー
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