出光興産

ケーススタディ

出光興産株式会社

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1,000超の製品に対応。

ISO 14067システマティックアプローチに基づくCFP算定を確立

潤滑油業界全体の価値の底上げを目指し、算定基盤を構築


カーボンニュートラル実現に向けた取り組みが世界的に加速するなか、企業には製品カーボンフットプリント(CFP)の可視化と、その信頼性の確保が求められています。ISO 14067は、CFPの算定および報告に関する国際規格であり、企業の脱炭素化やサステナブルな購買判断の促進を目的としています。

Case study 出光興産なかでも同規格の附属書Annex Cでは、多品種の製品に対してCFPを個別にゼロから算定するのではなく、共通のルール・手順・データ管理の仕組みを構築し、一貫した方法で算定・報告を行うためのフレームワーク(ISO 14067システマティックアプローチ)が示されています。

1,000を超える潤滑油製品を展開する出光興産株式会社は、事業価値の向上につながるCFP算定・管理体制の構築を目指し、ISO 14067 Annex Cに基づく妥当性確認声明書を2026年5月に取得。業界におけるISO 14067システマティックアプローチの先行事例となりました。

今回、同社潤滑油事業部でプロジェクトを推進した田村和志さん(出光興産株式会社 潤滑油二部 主任部員、2026年6月当時)に、取り組みの背景や苦労、そして今後の展望について伺いました。

 

CFPを「見える化」で終わらせず、価値創出につなげたい

Case study 出光興産出光興産がCFP算定システムの構築に取り組んだ背景には、排出量の把握そのものではなく、その先の価値創出を見据えた考えがありました。同社では2023年に戦略的サステナビリティ・プログラム”SustainaLube Initiative”を立ち上げ。サステナビリティと潤滑油(Lubricant)を掛け合わせた遊び心のある名称のもと、CFP算定システムの構築に加え、削減貢献量算定ルールの整備やリサイクル推進などを進めてきました。

田村さんは当時の狙いを次のように振り返ります。「潤滑油の価値は、摩擦低減・省エネルギー化を通じて社会全体のCO₂排出削減に貢献することにあります。その価値を客観的に示すためには、使用段階における削減効果だけでなく、原材料調達や製造段階も含めたライフサイクルでの評価が欠かせません。そのため、自社製品のCFPを高い精度で把握できるCFP算定基盤の構築を重要なマイルストーンとして位置づけました。」

CFP算定システムの構築にあたっては、実際に利用する現場を意識した体制づくりを重視。製造、物流、原材料調達などを含む複数部門から10名以上のメンバーを集め、プロジェクトとして推進したといいます。「CFP算定システムを作る際に意識したのは、「導入後に誰が使い、管理していくのか」という点です。システムを作っただけでは価値は生まれません。実際の運用を担う部門や活用する部門にも参加してもらい、将来的な定着まで見据えてプロジェクトを進めました。」

 

「国際的に通用するレベル」を目指したCFP算定プロジェクト

出光興産は当初から、構築したCFP算定システムを第三者の視点で評価することを想定していました。多数の製品を同一手法で算定する同社のアプローチはISO 14067 Annex Cとの親和性が高く、その適合性を客観的に示すことが重要だったためです。

さらに同社は、国際的に通用するレベルの信頼性確保を目指して妥当性確認に挑みました。妥当性確認を実施する検証機関の決め手について、田村さんは次のように語ります。「ISO 14065認定機関1であることに加え、日本語でコミュニケーションが取れることが重要でした。その両方を満たしていたのがテュフズードでした」

妥当性確認では、監査員との技術的な議論や要求事項の確認が数多く行われました。専門性の高い内容が多いからこそ、認識のずれなく議論を進められる環境が重要だったといいます。「テュフズードの監査員は内容を丁寧に細かく確認してくれ、誠実に対応してくれました。そのうえで、テュフズードジャパンによる翻訳サポートも助かりました。専門的な説明については、誤解が生じないよう、互いの意図をよく確認してくれました」

 

各プロセスの中核メンバーで監査に対応。多品種を展開するからこそ直面した課題

Case study 出光興産監査に対応したのは、プロジェクトメンバーの中でも、生産、原材料、物流などの各プロセスのデータを特に深く理解している中核メンバー。監査のプロセスについて、田村さんは次のように振り返ります。「監査を通じて、規格要求事項への理解が複数部門に浸透しただけでなく、各メンバーが持つ断片的な知識が組織全体で共有される契機になりました。結果として、データの参照元や計算方法など、システム全体の改善にもつながりましたね」

一方で、妥当性確認声明書取得までの道のりは決して容易ではありませんでした。ISO 14067システマティックアプローチでは、個々の製品の算定結果だけでなく、多数の製品に共通して適用される算定ルールや、データ管理の仕組みそのものの妥当性が評価されます。そのため、算定に使用するデータや前提条件について、高い透明性と再現性が求められます。

「潤滑油は、ベースオイル(基油)と添加剤を組み合わせて製造されます。CFPの算定には、それぞれの原材料に適切な排出係数データを割り当てる必要がありますが、出光興産では1,000を超える潤滑油製品を展開しており、使用する原材料も多岐にわたります。そのため、特に添加剤については既存のデータベースだけでは完全には対応できず、実際の原材料に最も適した、あるいはより近しい二次データを選定することが大きな課題となりました」

監査の過程では、想定以上にデータの精度を要求されたため、新たなデータベースの購入やシステム改修、再計算が必要となりました。また、変更内容を文書化し、その妥当性を説明できる状態に整えることにも多くの工数を要したといいます。こうした苦労は、1,000を超える製品群を展開するリーディングカンパニーならではのものであり、ISO 14067システマティックアプローチに取り組んだからこそ直面した課題でもありました。

もっとも、データ整備の面では助けとなる要素もありました。「監査対象となった工場はISO 14001を取得しており、環境関連データの管理体制がある程度整備されていました。その点は大きな助けになりましたね」と振り返る田村さん。また、次のように続けます。「(テュフズードの)監査員の方からは、出光興産のCFP算定システムの信頼性を高めることに貢献するという強い意志を感じました」

 

CFP算定基盤の構築から、GX価値の創出へ

Case study 出光興産今回の取り組みにより、出光興産は、原材料調達から製品出荷までのライフサイクルにおける温室効果ガス排出量を示すCradle-to-Gate CFPの算定基盤を整備するとともに、自社製品の使用によって削減されるCO₂排出量を評価する削減貢献量の算定基準やツールも確立。その結果、製品がもたらす環境価値を、これまで以上に客観的かつ根拠を持って示せるようになりました。

同社はこれまでも、省エネ性能に優れた高機能な潤滑油製品を提供してきました。今後は、それらの製品がもたらす環境負荷の低減効果や脱炭素化への貢献を「GX(グリーントランスフォーメーション)価値」として定量的に示すことが可能になります。さらに社内では、販売部門から調達部門まで幅広い組織に「サステナビリティ・アンバサダー」を配置し、CFPや削減貢献量に関する専門知識を持つ人材育成にも取り組んでいます。

「サステナビリティ・アンバサダーは、今回のプロジェクトメンバーではなく、各職場から新たに選出されたメンバーです。定例会議やeラーニングを通じてGXの知見を高めるとともに、名刺にも肩書を記載することで、GX推進の担い手としての役割を社内外に明確に示しています」

サステナビリティ・アンバサダーが顧客やサプライヤーなどさまざまなステークホルダーとの対話を深めることで、製品単体にとどまらず、バリューチェーン全体の脱炭素化を推進していくことが期待されています。

 

潤滑油業界全体、バリューチェーン全体の脱炭素化を見据えて

Case study 出光興産出光興産にとって、妥当性確認声明書の取得はゴールではありません。田村さんは「ネットゼロに向けた挑戦はここからが本番」と位置付けています。今回構築したルールや仕組みを活用しながら、対象製品を拡大し、一次データ活用もさらに推進する予定です。 

また、潤滑油業界では国際的にCFPや削減貢献量算定に関する標準化の動きが加速。それを受け、同社は国内の業界団体での活動にも積極的に関与しています。「自分たちのルール作りも大切ですが、皆ができるようになって意味があること。日本の潤滑油業界全体の価値の底上げにつなげていきたい」と田村さんは語ります。 

多品種の製品群を対象とした体系的なCFP算定基盤の構築。出光興産の挑戦は、自社の脱炭素化にとどまらず、顧客やサプライヤー、さらには業界全体を巻き込みながら、バリューチェーン全体の脱炭素化へとつながる新たな一歩となっています。

 

〈注〉
1.ISO 14065検証機関:ISO 14065は、温室効果ガスやカーボンフットプリントに関する検証・妥当性確認を行う第三者機関に求められる国際規格です。ISO 14065検証機関とは、CFP算定・報告プロセス 妥当性確認を実施する機関として、認定機関より認定を受けた機関を指します。テュフズードグループでは、テュフズードインダストリーサービスGmbH(ドイツ)が検証機関としての認定をドイツDAkkSより取得しています。テュフズードジャパンは、国内における窓口としてサービスを提供しています。詳細はこちら。


関連リンク

プレスリリース:テュフズード、出光興産の製品カーボンフットプリント算定の仕組みに対し妥当性確認声明書を発行(2026年6月17日)

テュフズードの製品カーボンフットプリント検証サービス

製品カーボンフットプリント算定・報告プロセスの妥当性確認

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